2007年12月18日火曜日

KIの映画評 vol.14

今年もいよいよ最後の月となりました。冬休みのご予定は? 

師走の町のあわただしい雰囲気にのせられて無駄な買い物をするよりは、この時期は映画館に行くのがいいかも。お正月映画といった混み合う映画ではなく、東京で秋に公開されたおもしろい映画が各地の映画館を回っています。紹介するのは女性が主人公の日本映画2作。(KI)

■ 『めがね』★★★★☆                   
 女性が主人公の映画って、たいていはヒロインが美人で、若くて、かっこいい男が出てきて、 恋愛して、事件が起きて…って、まあそういうのもたまにはいいけどね。
 この映画は、南の島(沖縄のどこか小さな島)に旅に出た若くはない女性タエコ(小林聡美)が、その島でふんわり過ごす夏の休日、ゆっくり過ぎる時間を映画にしたという感じのもの。事件が起こるわけでもないし、ただ、海から吹いてくる風と、そこで食べる豪華ではないけどていねいに作った食事と、海辺に座って、たそがれる時間を私たちも一緒に体感できる。

 そして、すてきなのは、島を訪れる常連さんとして登場するもたいまさこ演じるサクラさん。みんなが彼女の来るのを待っている。サクラさんの、押しつけがましくない、けれど人を巻き込む力のある自分流の過ごし方、不思議なおとなの魅力というのか、私もこんなおとなになりたいと思ってしまった。

 昨年人気を博した『かもめ食堂』の監督(荻上直子)、スタッフでつくったこの映画、キャッチコピーは、「何が自由か、知っている。」だって。



■ 『クワイエットルームにようこそ』★★★☆☆
 28歳のフリーライター佐倉明日香(あすか)。仕事、同棲相手との関係に行き詰まり、 ある日気がついたら女性だけの閉鎖病棟、クワイエットルームと呼ばれる白い部屋にいた。
 そうやって始まる話題の映画、昨年芥川賞候補にもなった同名小説を作者の松尾スズキが監督した。見所は、なにより魅力あふれる役者たち。

 明日香役の内田有紀もがんばっているが、なにより摂食障害の患者役の蒼井優、映画、『フラガール』で、若さあふれるすばらしい笑顔でフラを踊っていた子が、点滴につながれながら歩く姿には鬼気せまるものがある。

 そして、過食症の患者を演ずる大竹しのぶは、以前出演したホラー映画『黒い家』(1999)の時と同じくらいすごみのある怖さ(余談だけどあの映画の大竹しのぶを見た後はホラー好きの私でさえ夜眠れなかった)。

 それから、明日香の同棲相手を演じる宮籐官九郎、ただただ優しいけれど、人間関係が深刻で重そうになると逃げ腰になる男子を好演、リアリティがありすぎて官九郎さんその人と重なってしまったくらい。それから、軽くてお調子者役の妻夫木聡も何か変にぴったりで…。

 というわけで、他にもたくさんの個性的な役者たちが好演するのだが、途中、筋書きが男の目線になっちゃてると感じるところがあり、松尾さん残念!

 しかし、ともあれ、現代社会、都会で必死に生きる女性、明日香が閉鎖病棟を出るまでの14日間を描いたこの映画、刺激的な作品ではある。