2007年10月31日水曜日

片づけたい女たち


三軒茶屋のシアタートラムに『片づけたい女たち』を見に行く。芝居とか見に行きたいから誘ってね、と言われていたのでFさんを誘っていっしょに。
もう最初の、舞台が明るくなってきて、ごみ、ごみ、ごみの山の部屋を見たとたん、笑いの渦。
なんでこんなに片づけられないんだろう。というかなんで女は片づけるべきと思ってるんだろう。あまりにも身につまされることだらけで、笑い通し。
きちんとやろうとするから却って何も片付かないとか。
ごみの山から出てきた茶碗のお茶を飲むときにためらったりとか、あまりに日常的な動作が繰り広げられる。
下手に分別したいとか、リサイクルをがんばろうとかするからさらに片づけられないとか。

さらにだんだん女たち三人三様の悩みが出てきて…怖くもなっていくのだが…。

この芝居は確実にフェミの芝居でした。
こんな風にフェミってひろがっているんだなあって観客の笑いを感じながら思った。

脚本は永井愛さん。
演出は木野 花さん。
そして達者な役者が3人。

帰ったら朝日新聞夕刊に劇評が載ってました。でもなんかピンボケ。

4日までやっているそうですが、満杯だったので入れないかな。


2007年10月7日日曜日

追悼・若桑みどりさん

10月3日、夜、都内の女性センターを出たところで、電話がかかってきて若桑みどりさんの死を伝えられた。まったく信じられない状態のまま家に帰りネットをみると訃報がでていたのだが、それから御通夜に行ってもなんだか信じられないままだ。
 
 「ふぇみん」ではごめんくださいに登場し、また大阪で50周年集会のときの講師をつとめてくださり、何度もふぇみん紙上に登場してくださっていた。特に 軍事化とジェンダーバッシングが軌を一にして私たちに襲い掛かってきたこの数年、戦争とジェンダーの問題で発言してきた若桑さんにお願いすることはたびた びあった。私もインタビューもさせていただいたこともあり、原稿をお願いしたこともある。

 下北沢のお気に入りの喫茶店で白い麻のシャツ姿でインタビューを受けてくださった若桑さんは怖くもあり(怖い人は結構好きなのでOKなのだが)なかなかに魅力的だった。

 しかしなんといっても思い出のいちばんは上野千鶴子さんの国分寺事件での若桑さんだ。2005年に国分寺市の市民が企画した講座の中で、上野千鶴子さん の講演案を東京都が中止させるという暴挙に出た。それはジェンダーフリーに触れる可能性があるという理由だった。ことの次第が表に出たのが翌年の1月。そ こでまっさきに手を上げ、これは言論弾圧であると声明を書き、賛同人を1800人以上集めたのは若桑さんだった。その行動力と勢いはすごかった。

 その後「ジェンダー概念を話し合うシンポジウム」シンポジウムは実り多いものであったが、それに巻き込まれ、本『「ジェンダー」の危機を超える!』(青 弓社)つくりでごいっしょした。お弟子さんたちの「チーム若桑」を動員しながらの猪突猛進ぶりは印象深い。世田谷カソリック教会での御通夜の席で息子さん が亥年でしたと語ったときに、こっそり微笑んだ人は多かったのではないか。ともかくジェンダー平等を実現しようという熱い思いに動かされ私も右往左往しな がら共に「闘った」。
 そんなストレートで、正直で、感情豊かな若桑さんのファンは年齢別なくいたと思う。
 
 さらに、東京都知事選の時には女性たちで浅野女性勝手連をつくり、集会はかなり盛り上がったのはこのブログでもご存知のとおり。4月のある1日、女性勝 手連が1日、宣伝カーとともに歩いたのだが、そのとき、路上演劇をするはめになってしまった。若桑みどり作の芝居は、シロクマ役若桑さん、ブラックタイ ガー役は私。巣鴨から銀座、原宿まで路上芝居した。このパフォーマンスはおっぱいパフォーマンスとともに賛否両論で果たして選挙に効果があったかは私もよ くはわからない。しかし、ともかくシロクマのかぶりものを入手し路上でタイガー(イシハラ)をやっつける若桑さんは真剣だった。
 
 『戦争がつくる女性像』(筑摩学芸文庫)『お姫様とジェンダー』(ちくま新書)は入門編としてぜひおすすめしたい。また『女性画家列伝』(岩波新書)も まだamazonで入手できるようなので私もこれから読んでみたい。美術史家としての著作は多数あり、少しずつ読ませてもらいたいと思う。

 彼女は研究者であり、アクティブな研究者だった。本来すべてのジェンダーにかかわる人がそうであってほしいと私たちが願うところを、まったくちゅうちょなくやっていた人だった。そういう人が少ない中で、明らかに貴重な人だった。

 今年の夏は暑かった。その夏に大きな仕事をまとめられていたと聞いている。
 なんでまた逝ってしまったのだろう、そんな若桑さんの代わりを出来る人はいないのにと思う。

 ともかくごいっしょした行動のあれこれは楽しい思い出となっている。シロクマ姿の若桑さんを頭の片隅で思い出しつつ、もういちど本棚の『お姫様とジェンダー』を手にとって、若桑さんの死を少しずつ受け止めるしかない。

 そうそう、若桑さんは赤い薔薇に囲まれているのではないかと想像していたが、白と薄いピンクの薔薇に囲まれていた。(衣)