韓国フェミニストジャーナル『イルダ』へ送った原稿の3回目
東日本大震災から1年 私たちは何を失い何を未来に拓くのか③
3、原発政策は転換できるのか
福島第1原発事故のあと、脱原発へと日本が政策転換しなければならないと思った人は多い。9月19日の「さよなら原発集会」は日本では珍しい6万人を越えた集会となり、脱原発の1000万人署名は4,193,872筆(2月17日現在)を越え(12月時点)、続く放射能による被害の結果、市民の脱原発の意思は衰えているとは思えない。今年の1月の脱原発世界会議には会場をあふれる1万1500人が参加した(ソウル市長のメッセージビデオも映し出された)。しかし、ドイツで実現した政策転換が、日本ではなかなか進まない。世論の8割が脱原発に賛成であるが、脱原発を掲げた菅直人前首相の退陣後、野田政権は経済界のいいなりになり、現在は原発推進派が盛り返している。
事故後にもかかわらず、あろうことか、日本はベトナムとヨルダンへの原発輸出へ向けての手続きを進めている。
現在日本では原子力発電所54基のうち2基のみが稼働し、あとは定期点検等で止まっている。北海道の北海道電力の泊原発3号炉が4月下旬定検停止まで再稼働する原発がなければ、日本で稼働する原発はゼロになる予定である。
この事態に危機感を抱いた電力業界等は、定期点検中の原発の再稼働に向けて必死の様相である。
福島原発の事故原因すら明らかでないまま(現在国会で事故調査委員会が開催中)、関西電力の大飯原発(福井県)の形ばかりのストレステストの評価書を原子力安全保安院は妥当と判断、意見聴取会も合格とし、原子力安全委員会の審議に移った。地元合意を得て、その後首相と経済産業大臣など4人の判断で再稼働を決めるとしている。
原発事故後1年、大きな転換点に立っている。
このまま、定期点検などで稼働していない原発を止めておくのか。
原発なしでも日本は電力不足にならないのか。
原発のない社会を実現していくのか。
それとも、今止まっている原発を動かしていくのか。
老朽化した原発を動かすことは、地震の活動期に入った日本で危険なゲームに参加するようなものだ。福井県の大飯原発でもし原発の過酷事故が起これば、琵琶湖が汚染し、琵琶湖を飲料水とする大阪地域の人々への影響は測り知れず、また日本中が放射能汚染によって、福島よりも壊滅的な影響を被るだろう。
たくさんの犠牲を払い、また未来の命をも犠牲にし続けている原発事故から1年。日本の市民社会が問われているものは大きい。
日本の決断は世界にも影響を与えるだろう。そして世界が原子力発電に頼らない、核兵器に頼らない社会をつくること、権力を使って巨大なプラントを建設するのではなく、人々の民主的なプロセスによって地域に開かれた再生エネルギーを進めて行きたい。