『蟹工船』が売れているという。作者の小林多喜二は、プロレタリア文学作家として有名だ。虐殺されて遺体が戻ってきたときに立ち会った人々の中に、ふぇみん婦人民主クラブの創立メンバー、佐多稲子がいたという。
このあと、プロレタリア作家は次々と逮捕され、佐多稲子の夫、窪川鶴次郎も逮捕され、ついには佐多稲子も連行される。 そこから偽装転向や戦争協力などが起きていくのだ。
ふぇみん7月25日号には、「佐多稲子『私の東京地図』文学散歩」の最終回としてこの時代の佐多を描いた「道」の章を歩いた、戸塚や馬場の界隈のことが載っている。
弾圧の象徴的事件が小林多喜二の虐殺だったのではないか。
さてそんな風に想っていたら、佐多稲子の『キャラメル工場から』という作品を思い出した。この作品は小学校にも通えずキャラメル工場で働く少女を描いた作品。この少女はもちろん、佐多さん自身のことだ。この作品は佐多稲子のプロレタリア文学作家としての地位を確立した作品と言われている。
事業に失敗した父、祖母、病気の叔父…家計の足しにと働く少女。厳しい労働です。
郷里の小学校の先生からの手紙を読んで、便所で泣く少女。
今の時代は児童労働はないかもしれない。しかし、学校に行くこと、教材費や高校の授業料を払うことが困難になっている子どもたちは増えている。
そんなことを思うと、「キャラメル工場から』も必読なのでは、と思う。 (衣)