子どもが主人公の映画ってその周辺のおとながどう描かれるかが重要だったりする。子どもが脇役でないことで、むしろ周辺のおとなたちが魅力的で際立つ存在に見えることがある。(KI)
■『ミルコの光』★★★★☆
1971年イタリア、トスカーナ。10歳の少年ミルコは事故で両眼の視力を失ってしまう。
当時のイタリアでは盲目の子どもは、通常の教育を受けられず、両親と離れ、全寮制の男子だけの盲学校に転校させられる。そこで偶然彼が手に入れた1台の古いテープレコーダー、その機械を通して知る音との出会い、彼はみずみずしい感性で周辺の音を集め始める。
この映画は、現在イタリア映画界の第一線で活躍するサウンドデザイナー、ミルコ・メンカッチをモデルにした実話。70年代初頭の自由を求める運動が大き なうねりを見せていたイタリアの社会の中で、視覚障害者に対する保守的な思い込みを乗り越えようとする主人公ミルコとその周辺のおとなたちが魅力的に描か れる。
『ニュー・シネマ・パラダイス』や『ライフ・イズ・ビューティフル』につらなるイタリア映画らしい、いい映画だ。舞台となる盲学校の生徒を演じるのは、 イタリア全土で行われたオーディションで選ばれた演技未経験の少年たち。目の見えない子、見える子ほぼ同数ずつキャスティングされ、撮影前のトレーニング 合宿では見えない子どもたちが見える子どもたちに、視覚に頼らずに外の世界を感じる術を教えたという。
ちなみにミルコ・メンカッチは最近日本でも公開された1960年代から現代にいたる青春群像を描いた長編映画『輝ける青春』の音楽も手がけている。
■ 『この道は母へとつづく』★★★☆☆
極寒の凍てつくロシアの大地、見渡す限り雪に囲まれたフィンランドとの国境近くの孤児院、映画はそこに遠くイタリアから一組の夫妻がやってくるところから始まる。
映画の舞台となる2000年当時のロシアは、銀行や金融の破綻により、都会の通りにはホームレスの子どもたちがあふれ、その日一日生きのびるために路上 で働いていた。田舎の貧しい孤児院でアル中の院長と暮らす子どもたちにとって、その劣悪な環境から抜け出す唯一の方法は、裕福な養父母に引き取られていく ことだった。必死な目で養父母を迎える子どもたちと、院長とお金のやりとりをする仲買業者、べたべたした感傷を排した映像が胸を打つ
イタリアの夫妻に選ばれたワーニャは、引き取られていく前に一人で本当のお母さんに会いに行くという無謀な計画をたてる。彼は自分に関する資料を読むために隠れて字を覚え、そして孤児院を抜け出し、冒険の旅へと…。
ワーニャの周辺の人間たち、絶望し、開き直ってその日を暮らすおとなたちが、一途なワーニャの思いに引き込まれていく。映画の中で、束の間ワーニャに関 わるおとなたちのその表情やしぐさに彼らの重い日常、人生が見て取れる。そしてワーニャは最後にお母さんに会えるのだろうか。ロシアで実際にあったお話。