2007年7月24日火曜日

KIの映画評 vol.11

 情報が少なくて、あるいはステレオタイプの情報しかなくて、実際のところその国の人たちがどのように暮らしているのか知らないという国は多い。出かけて 行って直接その国の人たちに会うことが出来なくても、映画でそこで暮らす人の息づかいが伝わってくることがある。今回はイランの映画と、イスラエルの映画 を紹介してみます。(KI)

■『オフサイド・ガールズ』★★★★☆
イランでは、現在もイスラム教の教えによって法律で、女性がスタジアムで男性のスポーツを観戦することが禁じられている。しかし、国民的スポーツといってもいいほど大人気のサッカー、イラン代表チームのワールドカップ出場がかかった大事な試合を見ようと、男装してスタジアムに少女たちが乗り込んだ。
この映画はサッカー大好き少女たちの元気で勇気に満ちた物語。男装してスタジアムに向かうバスに乗り、試合前の興奮に沸き立つ男たちの間に紛れ込みながら 列に並んで中に入ろうと…、ドキドキ胸の高鳴りがこちらにも伝わってくる。全体に緊張感はあるけど悲壮感はない。ドキュメンタリーを見ているような臨場 感、そこここにユーモアがあふれ、見終わった後、彼女たちと一緒にサッカーの熱戦を応援し終わったような高揚感にかられる。世界3大映画祭での受賞暦をも つジャファル・バナヒ監督の最新作。バナヒ監督の作品は政治的な異議申し立てを含んだ作品が多いため、本作を含め今まで作った作品もイラン国内では公開さ れていないという。
サッカー大好き少女といえば『ベッカムに恋して』(どうしてこんなタイトルにしたのかわからないけど、原題の『Bend It Like Bekham』 はデビット・ベッカムのような弧を描くキックが蹴りたい、また、そのキックのように人生を変えたいという意味)も親に反対されながらサッカーチームに入っ ていくイギリスに住むインド系の少女の映画。これも元気が出る。

■『ジェイムズ聖地へ行く』★★★☆☆
南アフリカの小さな村で次期牧師に任命された敬虔なクリスチャン、ジェイムズはあこがれの聖地、エルサレムに巡礼の旅にやってきた。聖地への入口、イスラエル空港に降り立った途端、不法労働者と間違われ、その日から彼の外国人労働者としての過酷な毎日が始まる…。
素朴なジェイムズ青年が想像もしなかったイスラエル社会の現実とは。キリスト教、イスラム教、ユダヤ教の聖地であるエルサレムのあるイスラエルには毎年 200万人以上の巡礼者、観光客が訪れる。人口約700万人のこの国には約50万人の不法労働者が住んでいるという。近代資本主義国家イスラエルと、宗教 の聖地エルサレムの矛盾、資本主義的欲望の渦巻く社会に翻弄されながらも金儲け主義のルールを次第に理解していくジェイムズの姿を映画は皮肉とユーモアを 交えて描いていく。彼の心の旅の行き着く先は?

本作プロデューサーのアミール・ハレルは、パレスチナの自爆攻撃者を淡々と描いた『パラダイス・ナウ』のプロデューサーでもある。
2人の若者が自爆攻撃へ向かう48時間を描くこの映画は、毎日銃撃戦が起こり、ロケット弾が飛んでくる街、イスラエル占領地ナブルスで撮影されたという。昨年のゴールデングローブ賞最優秀外国語作品賞を初めとして数多くの賞を受賞している。

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